「年齢で免許返納の義務化は可?」ヤフー知恵袋での質問が話題に

昨今、高齢ドライバーによる重大事故が相次いでいることもあり、警察や自治体などが高齢ドライバーへ運転免許証の自主返納を呼びかけています。そんな中、ヤフー知恵袋で「高齢ドライバーがある一定の年齢に達したら運転免許証の返納を義務化することはできないか」などといった質問が話題になっています。法案が通れば出来るでしょうが簡単なことではありません。では、実際に質問者が言う【義務化】について考えてみました。

加齢による能力低下

今年4月、東京・池袋で起きた高齢ドライバーによる重大事故をきっかけに、世間では高齢者の運転は【危険である】という考えになっています。特にニュースなどでよく聞くのがアクセルとブレーキの踏み間違い事故だと思います。

実際に、公益法人交通事故総合分析センターで行った【ペダルの踏み間違い事故の年齢別の事故率】の調査結果では、【75歳以上:31%】【65~74歳:16%】【24歳以下:12%】【55~64歳:9%】【45~54歳:7%】【25~34歳:7%】【35~44歳:6%】となっており、年齢を重ねるごとに踏み間違いによる事故率が上がっているのが分かります。

言うまでもないですが、高齢になれば誰でも【運動機能・視覚機能・神経機能】といった身体能力が徐々に低下していくので、それらの低下がペダルの踏み間違いを始めとする運転操作ミスに繋がるのだと思います。

年齢で区切る問題

上述で、高齢なれば能力低下するという話をしました。しかし、その低下には個人差があります。そのため、一概に年齢で区切ってしまうと生活に支障が出る人も少なくありません。

現に、登山家の三浦雄一郎さん(86)、アイアンマン世界選手権を85歳で完走した稲田弘さんのように、年を重ねてもバリバリ活躍(動ける)人は日本中に沢山いるため、年齢による線引きは非常に難しいのが現状です。仮に年齢で区切るのであれば、さまざまな見地から誰でも納得ができるものでなくてはなりません。

また、運転免許証も国家資格なので、義務化をするには法案を通さなければなりません。しかし、多くの年配者で支えられている現政権などは、絶対的な根拠なくして年齢で区切るようなやり方はしないと考えます。もし、年齢制限を設ければ有権者から非難を受けるのは必須でしょう。
※H29年衆議院選挙投票率(総務省HP):【70代以上:60.94%】【60代:72.04%】【50代:63.32%】【40代:53.52%】【30代:44.75%】【20代:33.85】【全体:53.68%】

不公平といった反発の声が出る

昨今では、高齢ドライバーによる交通事故が大きく取り上げられていますが、若年層(16~19歳)の事故も高齢世代に匹敵するほどの事故率があります。

年齢層別の死亡事故件数(免許人口10万人当たり)で【75~79歳:5.7件】【80~84歳:9.2件】【85歳以上:14.6件】に対し、【16~19歳:11.4件】となっており【年齢で義務化】、つまり高齢者だけをターゲットにするのは、些か行き過ぎなところはあります。

運転試験で運転資格者を選別

現在、免許更新時には【認知機能検査】と【高齢者講習の受講】が義務付けられています。認知機能検査については、認知症になっていないかの検査。高齢者講習については、30分の座学と目の検査、運転講習です。

正直な話、この義務付けの主な狙いは【認知症判定】だと思います。認知症判定が下れば、更新時に医師の診断書の提出(認知症ではないという証明書)が必要になります。また、認知症検査の設問は健常者であれば難なく解ける問題なので、認知症判定と下れば判定通りの可能性が非常に高いです。しかし、認知症検査をパス(異常なし)しても事故を起こす人は起こします。講習に関しては試験ではなく、あくまで講習なので、例え運転を間違えてもアドバイスをもらって終わりです。

私は、検査と講習にプラスして、運転試験を行い、そこで受からなければ【免許のはく奪】にするという新たな制度の実施が良いと考えます。運転試験は、講習とは違い運転する資格があるか否かの判定なため、年齢による個人差などは関係なく実力勝負となります。そもそも、運転技術がない人は運転するべきではないのですから。

また、高齢者だけを試験項目の追加にすると「差別だ!」といった声が生まれる可能性があるので、全年齢を対象にした方が良いと思います。(※ここでは、試験場や試験官の確保などの問題は省きます)しかし、試験に落ちて免許をはく奪された人の受け皿もしっかりと決めておかなければいけません。

最後の運転試験は1つので案でしたが、ここで述べたようにヤフー知恵袋で質問されていた年齢制限による返納の義務化については、一筋縄でいかないことは言えるでしょう。