松橋事件:無罪確定 認知症で意思疎通困難乗り越えて

「松橋(まつばせ)事件」で殺人罪に問われ、約10年間服役していた「宮田 浩喜」さん(85)。2019年3月28日、熊本地検が上訴権を放棄したため、宮田さんの無罪が確定しました。

◇ 高齢者向け住宅で、無罪が伝えられた

事件から34年、弁護団が再審請求に着手して27年。判決から約2時間後の正午過ぎ、弁護団共同代表の「斉藤 誠」弁護士(73)は、無罪を伝えに宮田さんが住む熊本市内の高齢者向け住宅を訪れました。

宮田さんは、度重なる脳梗塞と認知症の影響で意思疎通や自力で歩くことが困難な状態になっていました。斎藤さんは、そんな宮田さんの左手を両手で握り「無罪になりましたよ」「無実ですよ」と数十回呼びかけ、宮田さんは無言で斉藤弁護士を見るやいなや、力強く手を握り返し、目には涙が溢れていました。

◇ 宮田さんと31年間戦う

斉藤弁護士は、事件の上告審で宮田さんと出会って31年。40年余りの弁護士人生を「松橋事件」と共にあったと話しています。斉藤弁護士は「宮田さんは、この瞬間を待っていたと思う。宮田さんに無罪を伝えることができ、弁護団としてやっとこれで1つ終わった感じがします」。宮田さんの次男、賢浩さん(60)は「おやじ、がんばったな」と声をかけるのが精一杯だったと語っています。

◇ 裁判所の誤判への言及、謝罪はなし

法廷での判決宣言は、わずか10分ほどで終了。この松橋事件での裁判所の誤判への言及や謝罪は一切なかったということです。これに対して賢浩さんは、検察について「最後まで抵抗し、何ら謝罪もなし。残念です」と怒りをにじませていました。 

34年越しの無罪を宮田さんは、どのように受け止め思ったのか。無罪を勝ち取っても、失った34年間は、もう取り戻せない。宮田さんのような悲劇を繰り返さないためにも、この教訓を生かしてもらいたいと切に願います。

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