高齢者の「投資詐欺」被害増加 認知力と退職金が問題

近年、高齢者の投資詐欺が増えてきているのはご存知でしょうか。その背景には、加齢に伴う認知力の衰え、自信過剰、退職金による余剰資金にあります。また、高齢者は「必ず儲かる」といったフレーズに弱く「詐欺的投資勧誘」のターゲットになりやすい傾向にあります。それは、単に投資に対する知識不足だけではないようです。

◇ 約7割の高齢者が「詐欺的投資勧誘」の被害

詐欺的投資勧誘とは、投資をする商品が必ず得するように思い込ませ、勧誘する行為のことを指します。いわゆる「絶対儲かる」「今買えば儲かる」「あとで高く買い取る」などといった詐欺の決まり文句です。こういった投資話(未公開株・外貨・社債・事業など)を電話や手紙、ダイレクトメールなどでを持ち掛けてきます。

2013年に、消費者委員会がまとめた調査報告に、全国の消費生活センターに寄せられた「詐欺的投資勧誘」に関する相談の約7割が65歳以上の高齢者だったことが分かっています。

さらに、18年12月にフィデリティ退職・投資教育研究所が「65歳から79歳」の高齢者1万1,960人に老後の金融資産管理について聞き取り調査を行ったところ、金融被害に遭った経験を持つ高齢者が4.6%で、そのうち6割が詐欺的投資勧誘だったことが明らかになりました。また、金融資産額や金融に関する知識や判断能力の関連については、はっきりとした相関はないことも同時に判明しました。

◇ 自信過剰が詐欺被害につながる

上記で行った調査で、知識や判断能力ではなく、自信過剰が原因で被害に遭っている可能性があります。それを裏付けるデータが、「自身の金融知識は同世代の人と比べてかなり高い」と回答した人が、実際に金融知識のテストを行った際の点数が平均より下回っていた人が多かったのです。それに比例して、金融詐欺の被害率も9%も跳ね上がったことが分かりました。

海外の行動経済学の研究では、高齢者の認知能力の低下が相まって自信過剰になりやすい傾向にあることが分かっています。 

◇ 半数の人が退職金を投資に回す

わが国では、現役世代の人に比べて高齢者の方が投資に興味を示しやすい傾向にあります。理由としては、現役世代の人は、住宅ローンや子どもの教育費などといった支払いが多いため、なかなかリスク資産にまで手が回りにくいのが現状です。

しかし、それが高齢者になれば支払い負担も落ち着き、且つ退職金が入り、余剰資金が増えるためライフサイクルが明確になってきます。こういったことから、退職金で投資をする高齢者が多いのです。

これには明確なデータもあり、フィデリティ退職・投資教育研究所が行った高齢者調査で、全体の43%の高齢者が投資をしていたことが判明。そのうちの3分の2の高齢者が投資経験を持っていました。さらに、定年後に受け取った退職金を投資に振り分けた人が「8,055人中、3,974人」と約半数が退職金を元手資金にしていたのです。

◇ 資金がないから投資をしないだけ

投資自体が悪いことではありません。しかし、投資をする動機が金融の知識や判断能力があるからするのではなく「資金があるから(できたから)増やしたい」という高齢者が多いことが問題です。

そういった思いつき(成り行きまかせ)の考えは、詐欺的投資勧誘の格好のターゲットです。

投資は、お金があれば出来ますが儲かるとは限りません。また、知識を持っている人でも失敗することはあります。そのため、「お金ができた」という成り行きまかせに投資をするのは、あまりにもリスクが大きすぎると言えるでしょう。