「エアリハ」が話題 認知症予防体操で高齢者が注目

近頃、高齢者の間で、認知症予防の体操「エアリハ」というリハビリが評判を呼んでいます。初めて聞く方もいると思いますので、簡単に解説しますと、まず、エアリハのエアは「エアー」、つまり空気です。エアギターというものが昔に流行りましたが、それに近いものです。リハは、リハビリテーションのリハです。

そして、エアリハの生みの親となる方が、奈良県三郷(さんごう)町の理学療法士・アマチュア落語家の「繁岡 秀俊」さん(50)です。繁岡さんは、エアリハは落語からのヒントを得て作ったと語っています。

◇ 想像力を働かせた落語と体操の融合

繁岡さんは、落語で使う「扇子を箸に見立てて使いうどんをすするように見せる」などといった、お客さんの想像力を駆り立てる動作を「道具を使っているかのように、想像する体操はできないか」と考案したのが「エアリハ」でした。そして、この「エアリハ」は「道具を使っているかのような」というところが最大のポイントです。

イメージがつきづらいと思いますので、実際の様子を映した動画を掲載しておきますので、ご覧ください。

動画でお客さんが行っている通り、チューブを想像し引っ張っています。人によって、固いチューブを想像して強く引っ張る人もいれば、柔らかいチューブを想像し軽々と引っ張る人もいるかもしれません。当たり前ですが、想像した対象物が違えば入る力も変わってきます。そういった想像力と動作を同時に行うのが「エアリハ」なのです。

◇ 認知症予防は、同時に物事を行う

認知症予防の体操は数多くありますが、その中でも特に有効とされているのが「マルチタスク」です。マルチタスクは、複数のことを同時に行うという意味なのですが、動画を見ていただけたら分かるように、エアリハは、何かを見立てるという「想像」と見立てて動く「動作」が同時に行われています。この行為そのものが、マルチタスクにあたり、認知症予防に繋がると考えられています。

また、エアリハは、安全にリハビリが行えるのも魅力の一つです。運動器具などを使用する際は、大なり小なりのリスクが伴いますが、エアリハは自分ができる動作を想像して動くので比較的安全に行えます。

◇ 大勢でやると笑いも生まれる

さらに、多くの人と行うことにより「笑い」が生まれると繁岡さんは語っています。この笑いが、認知症予防を促進させる重要な働きをさせてくれるのです。

大阪府立健康科学センターが、大阪府内の住民約2,500人を対象に「認知機能低下症状あり」に該当した人のうち、「ほとんど笑う機会がない」と回答した人は「ほぼ毎日笑う」と回答した人数の3.61倍に達するという結果が出ました。いかに、笑うことは認知症の予防に不可欠なのかが分かる結果です。

「想像」「動き」「笑い」の三拍子が揃ったエアリハは、今後、新たな認知症予防の体操の先駆けになるかもしれません。